共有名義の不動産とは

相続で複数の相続人が遺産を取得する場合、遺産分割協議が完了するまでは相続人全員の「共有名義」状態になります。 また協議の結果として「実家は兄弟3人で共有する」という形になることもあります。

共有名義の不動産は、処分・売却・賃貸に制限があるため、トラブルの温床になりやすいです。


共有名義で「できること」「できないこと」

単独でできること(各共有者が単独で可能)

  • 自分の持分を第三者に売却する(ただし買い手はほぼつかない)
  • 共有物の保存行為(現状維持・修繕など)

過半数の同意が必要なこと

  • 賃貸借契約の締結・解除
  • 短期の管理行為

全員の同意が必要なこと

  • 不動産全体の売却
  • リフォームなどの変更行為
  • 長期の賃貸契約

全員の合意が取れない場合

最も多いトラブルが「売りたい人」と「売りたくない人」が混在するケースです。

方法1:共有物分割請求

裁判所に申し立てて、共有状態を解消することができます(民法256条)。

  • 現物分割:土地を実際に分ける(土地が広い場合に有効)
  • 換価分割(競売):裁判所が競売にかけ、代金を持分に応じて分配
  • 価格賠償:一人が他の共有者の持分を買い取る

方法2:持分買取業者への売却

自分の持分だけを専門の買取業者に売ることができます。 ただし市場価格の30〜50%程度になるため、最終手段として考えてください。


合意に向けた実践的なアドバイス

感情的な問題を切り離す

相続の場面では「実家への思い入れ」「金銭的な不満」が絡み合います。 話し合いを「感情の場」ではなく「経済的な合理性の議論」に持っていくことが重要です。

具体的な数字を出す

「このまま維持すると年間○万円かかる」「今売れば手取り○万円になる」という具体的な数字があると、合意が取りやすくなります。

第三者(司法書士・弁護士・調停)を介在させる

家族間の話し合いが難航する場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用することも選択肢です。費用は申立手数料1,200円から(財産価額により変動)。


「相続した持分だけ」を放棄することはできないか

相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。 既に相続を受け入れた後は、持分だけを放棄することは基本的にできません。

ただし相手方(他の共有者や第三者)への贈与・売却は可能です。 持分0円で贈与する場合は贈与税の問題が生じることがあります。


まとめ

共有名義の不動産で最も大切なのは早期に全員で話し合いの場を設けること。 放置すると代が変わるたびに共有者が増え(数次相続)、解決がどんどん難しくなります。 費用・税金の具体的な試算をもとに、冷静に合意形成を進めましょう。